オーケストラや吹奏楽で低音域を担当する弦楽器のコントラバス。背丈は180センチを超え、重さは10キロもあるが、座りながら演奏する際は楽器を体で支える必要がある。体の負担を減らして思い通り演奏できるようにと、コントラバス奏者がひと工夫を凝らしたイスが誕生した。
開発したのは、水戸市に住む建築士の大森恵子さん(48)。茨城県内の市民オーケストラ「茨城交響楽団」の一員でもあり、趣味でコントラバスを弾いている。
コントラバスに出会ったのは吹奏楽部員だった高校生のとき。オーケストラ全体のリズムをつくることに魅力を感じ、大学生や社会人になっても、そのときどきの楽団に入って弾き続けていた。
しかし、2010年に出産を経験したあとは演奏から遠ざかった。股関節が痛み、楽器を脚で支えることがつらくなった。
それでも、オーケストラで演奏したいという思いは強かった。子育てが一段落した19年、茨城交響楽団に復帰。ところがすぐに新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)し、公演自体が中止になる事態に陥った。
試行錯誤の末、たどり着いた形
みんなで集まる合奏練習さえ、しばらく中止になると伝えられたある日の夜。やるせない気持ちで、普段使っているイスに目を向けると、クッションがへたっていた。直そうと、イスを分解しているうちに、ある考えが浮かんだ。
「イスの座面の形を変えたら…