日産自動車の硬式野球部が2025年に活動を再開した。
突然の休部から16年。その吉報を待ちわびていた一人の姿が、表舞台にはいなかった。
「時間があるときには練習場に行って、球拾いやグラウンド整備をしたり、ビデオを撮ったりもしています。野球部に所属していないので、迷惑をかけない範囲で応援させてもらっています」
そして、続けた。
「現役時代は球拾いをすることが楽しいとは、思いもしませんでした。不思議ですよね」
屈託のない笑顔で語るのは、鳥海健次郎さん(44)だ。日産野球部が休部する前に、マネジャーを務めていた。
横浜高(神奈川)では同学年のチームメート、松坂大輔さん(44)と一緒に甲子園春夏連覇を達成した。関東学院大(神奈川)でマネジャーに転身。2002年の日米大学野球選手権で「松坂世代」を擁する全日本大学選抜チームの学生総務に抜擢(ばってき)された。
その翌年、日産自動車へ入社。「松坂世代のマネジャー」として、選手以上に注目を集めた。
「社会人野球でやるからには、日本一のマネジャーになりたいと思っていました」
日産野球部の創部は1959年。社会人野球の都市対抗大会と日本選手権の全国大会には、計45回にわたって出場している名門だ。社会人1年目は2度の優勝経験がある都市対抗大会に出場できなかったものの、秋の日本選手権ではチーム一丸となって初優勝を果たした。
だが、目標の日本一を達成したときから、歯車が狂っていった。
偶然見かけた母「どうしちゃったの」
「優勝して何が起きるかとい…