AI(人工知能)など科学技術の進歩やネットの普及は、法ですぐに白黒がつきにくいグレーな問題を数多く生み出しています。法哲学者の永石尚也さんは、法だけに頼らず、「グレーに耐える」ことが重要になっていると考えます。その理由を聞きました。
◇
いまの社会で、グレーな領域は広がっていると思います。科学技術の分野でいえば、影響が比較的シンプルな技術、例えば自動車なら、事故の確率や被害についてのリスク計算はやりやすい。しかし、影響が多様で変化するAI(人工知能)のような技術は、その利用形態によって、リスクが変わってきます。安全と危険の間のグレーな領域が非常に広い技術なのです。
生命科学分野でも、例えば「脳オルガノイド」があります。ヒトのiPS細胞から培養してつくった脳組織で、脳の働きを調べるなどの目的に使われていますが、この技術がさらに進歩していけば、意識や人格のようなものを持つことも考えられる。オルガノイドと人間の間の線をどのように引くかというグレーゾーン問題は避けられません。
ネットやSNSの普及は、言…