(29日、第107回全国高校野球選手権西東京大会決勝 日大三8―4東海大菅生)
「ありがとう」。両者無得点の一回裏1死一、二塁。東海大菅生のエース・上原慎之輔(3年)が、このピンチを併殺に仕留めてベンチへ戻る遊撃手の前田蓮(同)に声をかけた。内野手が打球を巧みにさばき、アウトを重ねる度に伝えていった。
昨夏の西東京大会の5回戦で敗退した直後だった。仲間や家族への思いを形にすることで気持ちの支えにもなると思い、ノートを開いた。テーマは「その日の感謝の気持ち」。寮に帰ってからかかさず書き記し、いつからか自然と感謝の言葉を周囲に伝えることが増えていった。
迎えたこの日の決勝。絶好調だった。内角球を見せながら、変化球で内野ゴロを打たせようとした。しかし、三回裏2死二、三塁。外角低めを狙ったチェンジアップが甘く入り、今大会で初めて失点した。「打球が速く、2ストライクから粘ってくる。甘くない球も狙われ、これまでとは違った」
試合後、「ふがいない投球をした」と肩を落としたが、「秋の都大会1回戦で負けてここまで来ることができたのは仲間のおかげ」と、ここでも感謝を口にした。感謝の思いがあふれるノートは今、4冊目に入った。今日、ノートに書くことはもう決めている。「決勝でマウンドに上がらせてくれてありがとう」=神宮