手紙が届いた。青い封筒の中の便箋(びんせん)にきれいな字が並び、最後に「野球部一同より」と書かれている。
3月22日、吹奏楽部員が集まる練習室で、クラリネットの西澄江さん(3年)が少し緊張しながら読み上げていった。
《センバツ大会の甲子園での応援ありがとうございました。緊張もありましたが、皆さんの応援のおかげで精一杯プレーすることができました。》
3年ぶりに春の選抜高校野球大会に出場した天理(奈良)の野球部は、その2日前に初戦で山梨学院と戦った。
序盤から得点圏に走者を進めたが、好守に阻まれてなかなか好機を生かせず、1―5で敗れた。
《勝利することが最高の恩返しだと思い、日々の練習から頑張りましたが、敗戦という悔しい結果になり、本当に申し訳ない気持ちです。》
連載 アルプスの夏音
今年も甲子園ブラスバンドフェスティバルが開かれます。アルプススタンドの「あの曲」にまつわる物語や、応援に懸ける思いを描きます。
申し訳ないなんて、全然ない!
西さんは思わず、心の中で返事をした。
全力のプレーをみせてくれて、ありがとう。九回の最後の攻撃のことはいつだって、鮮やかに思い出せる。
4点差を、何とかはね返さなきゃいけない。アルプススタンドにいた西さんたちが演奏した曲は「ワッショイ」。1972年に初披露された天理のオリジナル曲だ。
相手を威圧するようにスロー…