Smiley face
シジュウカラのジェスチャー「お先にどうぞ」。鈴木俊貴さんによれば、巣の入り口は小さく、1羽ずつ順繰りに入るしかないという=鈴木さん提供
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 野鳥のシジュウカラはジェスチャーで特定の意味を伝える。鳴き声の言葉も持っている。

 どちらも動物言語学者の鈴木俊貴・東京大学准教授(40)が世界で初めて発見した。すでに、さまざまな動物で、意思疎通の力を解明する研究が動き始めている。いずれは人間も含めて、言語が進化する原理に迫れるかも――。鈴木さんに、今回の成果と今後への期待を語ってもらった。

翼を震わせ「お先にどうぞ」

 シジュウカラが両方の翼を小刻みに震わせると、「お先にどうぞ」を意味するとわかりました。子育ての時期には親のオスとメスが別々に、エサを探しに行きます。同時に戻ってきたときに、片方がこのジェスチャーをすると、相手が先に巣に入る。

 昨年5~6月、長野県北佐久郡の森に巣箱を設置し、つがい8組を観察しました。ジェスチャーをした26回のうち24回がメス。すると23回はオスが先に巣に入る。メスがジェスチャーをしなければ、オスは後から入ります。

 シジュウカラは200種類以上の鳴き声を持ち、2語を並べる文法もあります。でもジェスチャーを使うのは、巣に近いからでしょうか。鳴き声は遠くまで届きます。カラスやテンなどの天敵に巣の場所を知られる危険があるので、微妙なしぐさで伝えるのかもしれません。

 動作に特定の意味を結びつけるのは、たんに物や方向を指さすジェスチャーよりも高度です。例えば、片手を小さく振ると「さよなら」、大きく振ると「おーい」。動作と意味の関連が文化的に決まっているわけです。

 これまでジェスチャーは、人間や類人猿といった限られた動物でしか見つかっていませんでした。今回の発見によって、今後いろいろな動物で、体のいろいろな部位を使ったジェスチャーが見つかるかもしれません。

 すでに動物たちの言葉の力を解き明かす動きが始まっています。野生のチンパンジーには単語を組み合わせる力がありそうだとする論文が昨年発表されました。アフリカのシロクロヤブチメドリやキャンベルモンキーでも、鳴き声を組み合わせていると示唆する観察報告があります。

 こうした研究がより進むように2022年、動物言語学という新しい学問分野を国際学会で提唱しました。私のシジュウカラの研究をもとに、動物の意思疎通をどうやったら証明できるのか、指針や枠組みを世界に向けて提示しました。

人間も鳥も二足で立つから……

 対象は人間にも広がります…

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