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金沢海上保安部に所属する潜水士の(左から)石川洋平さん、竹谷流輝さん、石場功一さん、工藤裕太郎さん=2025年、石川県白山市、金沢海上保安部提供
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 金沢海上保安部にこの春、「海猿」が15年ぶりに配置された。海に潜って人命救助などにあたる潜水士4人は、迅速な海難対応を目指して日々訓練を積み重ねている。

 4人は潜水班長の石川洋平(しょうへい)さん(36)、石場功一さん(36)、竹谷流輝さん(32)、工藤裕太郎さん(28)。金沢海保によると、全国での体制見直しで、同海保の巡視艇「かがゆき」に新たに配置された。昨年の能登半島地震や奥能登豪雨のような大規模災害の際には海での捜索活動にもあたる。

 4人は密漁を取り締まる見回りや、プレジャーボートの安全指導など、海上保安官としての業務に加え、月に2~3日、海での実践的な潜水訓練に取り組む。

 空気ボンベを使わずに、深さ4メートルにある重さ10キロのおもりを海面に揚げる「錘(すい)上げ」や、おもりを抱えたまま仰向けで泳ぐ「錘運搬」は、海底に沈んでいる人の救助を想定。船首から垂らしたロープをつたって、海面から腕力でのぼりきる「船首登攀(はん)」では、座礁した船などへの乗り込みを想定している。30分泳ぎ続けたり、全力で50メートルを泳いだりする「ドルフィン訓練」……。多様に組み合わせたサーキット訓練で体を鍛える。

 竹谷さんは「どんな状況でも、落ち着いて救助作業にあたること、要救助者の気持ちに寄り添うことを意識している。現場でより多くの引き出しを持つためにも、日々の訓練や研修で経験を積み重ねたい」。

 4人の中で、最年少は東京都出身の工藤さん。中学生のとき、潜水士の映画「海猿」を見て憧れた。「主人公の人命救助にかける強い思いが、多感なころの自分の心を打ちました」。

 ただ、海上保安庁に入庁後も、憧れの潜水士は狭き門だった。

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