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秋田大会 秋田商―金足農 154球で完投した金足農のエース吉田大輝=さきがけ八橋

 (21日、第106回全国高校野球選手権秋田大会決勝 金足農6―5秋田商)

 すでに16安打を浴び、球数は140球を超えていた。

 九回、先頭からの2連打に失策も絡み、1点差に迫られた。なおも1死満塁のピンチ。金足農のエース右腕吉田大輝(2年)は、最後の力を振り絞った。

 「絶対、俺が勝たせるって気持ち」

 浅い中飛に打ち取り、あと一つ。次打者は140キロ超の速球で追い込んだ。最後は、外へのスライダーで空振り三振に仕留めた。歓喜の中心に立った。

 「3年生がつないでくれたマウンドだったので」

 初戦の昨夏代表の明桜との2回戦では、延長十回2失点の力投。準々決勝までの3試合はすべて一人で投げきったが、準決勝の秋田工戦は温存された。代わりに近藤暖都ら3年生4投手が、短いイニングをつなぐ零封リレー。先輩の意地を見せつけられた。中4日のマウンド、エースとして奮い立たずにはいられなかった。

 金足農は二回にスクイズなどで3点を先取。ペースをつかんだかに見えたが、相手の秋田商はチーム打率が3割4分を超える強力打線だった。

 伸びのある直球も捉えられ、守りにミスも出た。すべての回で走者を背負う苦しい展開だった。

 それでも、「点を取られるのはしょうがない、次を切ればいい」。4度も1点差に迫られたが、同点打だけは許さなかった。

 兄の輝星(オリックス)が2018年に全国準優勝を果たして以来の切符をつかんだ。常々「甲子園に見に行くからな」と言われ、前日にも「がんばれ」と連絡をもらった。

 「最終的な目標は兄さんたちを超えること。甲子園は自分がすべて投げきって抑える気持ち。これからまた、必死に練習していきたい」

 ノーシードから駆けあがった「雑草軍団」。物語の第2章が、まもなく甲子園で幕を開ける。=さきがけ八橋(大宮慎次朗)

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