銀河団の中心部で「風」が吹いていることを発見したと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究グループが発表した。X線天文衛星「XRISM(クリズム)」で観測した。銀河団の成長が今も続いていることを示す証拠だという。論文が13日、英科学誌ネイチャーに掲載された(https://doi.org/10.1038/s41586-024-08561-z)。

ケンタウルス座銀河団中心部の想像図。青みがかった色で高温ガスの流れを示した。白は銀河、赤茶色は低温のガス=JAXA提供

 銀河の集まりである銀河団の中心部のガスは、数千万度以上と非常に高温だ。中心部はX線を放射してエネルギーを放出しているため、放射冷却によってガスの温度は下がるはずなのに、まんべんなく高温を保っていることが謎だった。

 そこで研究グループは、銀河団としては地球から近い約1億光年の距離にある「ケンタウルス座銀河団」の中心部の光の波長を、XRISMを使って精密分光観測した。ドップラー効果を利用して詳しく解析したところ、中心部の高温ガスが秒速130~310キロで地球の方向に流れていることが分かった。

観測された高温ガスの流れの解説図。ケンタウルス座銀河団の中心に位置しているのがNGC4696銀河=JAXA提供

 この「風」によって中心部にあるブラックホールからの熱などがかき混ぜられ、ガスの温度が保たれていると考えられるという。

 こうした高温ガスの動きは、ケンタウルス座銀河団に別の小さな銀河団が衝突・合体した影響で生じたと考えられるという。

 東京都立大の藤田裕教授は会見で「『風』が吹いていること自体が、銀河団が今も成長していることの証拠でもある。成長が止まれば何も起きない。ダイナミックに生きているんだという感覚を持った」と話した。

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