マリエ・イブさん(44)は、常に何かにおびえているようだった。
「命がけで脱出してきた。今もギャングの姿や銃声が脳裏から離れない。いないと分かっているのに、外出する度に周りを警戒してしまう」
イブさんに取材したのは、カリブ海の島国ドミニカ共和国だ。首都サントドミンゴにある集合住宅で、娘のファデルさん(20)と暮らしていた。

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出身は、同じ島の西隣の国、ハイチの首都ポルトープランスだ。ハイチでは貧困と政情不安が続き、2021年7月のモイーズ大統領の暗殺後、状況はますます悪化した。フランス語で「王子の港」を意味する首都も、事実上、ギャングが支配する無政府状態に陥り、治安が極端に悪くなっている。
イブさんが住んでいたラプレン地区は、ギャング団「シェン・メシャン」(「悪い犬」の意味)の根城だ。「治安はずっと悪いが、特にモイーズ(大統領)が暗殺されて以降は、いつ殺されてもおかしくなかった」
ハイチの首都ポルトープランスは、ギャングの支配で無政府状態に陥ったともいわれています。記事後半では、ハイチの成り立ちや、国際社会の反応が鈍く支援が行き届かない現状について報告します。
住民の外出時間を指定するギャング
イブさんによると、ギャング…