太陽光発電施設の銅線ケーブルなど金属が盗まれる事件が急増している事態を受け、警察庁の検討会は9日、盗品流通防止などのための法規制が必要だとする報告書を公表した。金属くずの買い受け業者に、取引相手の本人確認の義務づけなどを盛り込んだ。同庁は報告書をふまえ、新法案をまとめ、早期に国会に提出する考えだ。
金属盗は、銅の価格高騰などを背景にここ数年増加が目立つ。盗まれた金属は買い受け業者に持ち込まれ、売買されている実態があるという。
警察庁は学者と業界団体幹部らを委員とする検討会を昨年9月から開催し、報告書をまとめた。
報告書は、金属くず業者の義務などを定めた条例がある17道府県を除き、金属くずの売却に規制がなく容易に処分できる現状を指摘。買い受け業者に、取引時に顔写真付きの書類による本人確認と、本人確認や取引の記録の作成・保存を義務づけるべきだとした。個人が、相当量の金属を持ち込むなど、盗品である疑いがある場合は警察に申告する義務も挙げた。
買い受け業者は5万~10万、届け出制に
現在は買い受け業者への法規制がないため、営業を届け出制とし、警察から必要な情報を提供することも提言した。警察庁の推計では、金属くず買い受け業者は全国に5万~10万くらいあるという。
銅線盗などには、ボルトクリッパーやケーブルカッターと呼ばれる切断用工具が使われる。これらはホームセンターなどで入手できるという。報告書は、一定の大きさのこうした用具を隠し持つことを処罰対象にすべきだと指摘した。侵入盗対策として特殊開錠用具所持禁止法(ピッキング防止法)でドライバーやバールなどの隠匿携帯が禁止されているのと同様にするという。
警察庁によると、金属盗の被害は増加し続け、2023年は約1万6千件に上り、その約半数を茨城、千葉、栃木、群馬、埼玉の関東の5県が占める。24年は全体で2万件を超える見込みだ。23年に起きた金属盗の被害総額は約132億8700万円に上り、窃盗被害全体の約2割にあたる。うち約97億7900万円を銅が占める。
警察庁の露木康浩長官は9日の記者会見で、「一部の悪質な買い取り業者の存在が金属盗を助長している。法案提出にむけた作業を速やかに進めていく」と述べた。
「社会生活に大きな影響」警察幹部に危機感
銅線ケーブルなどの金属が盗…