魚市場ではかりに乗せられるメカジキ=2024年12月23日、千葉県銚子市飯沼町、根岸敦生撮影

 正月準備が佳境を迎えている。千葉県銚子市では、この街ならではの「おせち」の用意がある。

 銚子ではマグロの赤身に、メカジキを取り合わせて刺し身にする家が多い。昔から紅白でめでたいと貴ばれてきた。

 23日朝、銚子市漁業協同組合の第1卸売場にメカジキが並んだ。犬吠埼沖約160キロの漁場で、高知県や宮崎県のはえなわ船がとった。

 メカジキは、汁物にも入れる。脂がのっていておいしいそうだ。

 もう一つは「伊達(だて)巻き」。一般的な魚のすり身を入れてロール状にするものとは異なり、銚子の伊達巻きは卵だけで焼き上げ、小さな瓦のような形に仕上げられる。

 寿司(すし)店の大久保(東芝町)が元祖で、明治時代に細工寿司の一種として考案された。店は江戸中期から料亭として銚子随一の名店だったという。

 醬油(しょうゆ)醸造と漁業で栄えた銚子で「旦那衆の会合というと、ここだった」と店の大久保知子(としこ)さん。

 だしにみりん、薄口醬油、砂糖で作った糖蜜と卵を合わせ、オーブンを使い弱火で約2時間かけて焼き上げる。「漁夫のプリン」の異名もあり、表面に焼き色が付き、甘く、むっちりとした舌触りだ。

 似た味わいとすれば、宮崎県日南市に伝わる「飫肥(おび)の厚焼き」を連想させる。

 あづま寿司(三軒町)ではこの時期、店を休んで、伊達巻き作りに追われる。すでに予約でいっぱい。「無添加ですべて手作業。特に火加減が難しい」と店主の加瀬充規(みつのり)さんは言い、店内は洋菓子店のような匂いで包まれている。

 銚子の伊達巻きは市内の鮮魚店でも作られる。

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