首や肩の凝りに長年悩まされてきた。知人の勧めで鍼(はり)治療すると、症状は劇的に改善した。なぜ効くのだろうか。そのメカニズムについて取材した。
鍼治療は、皮膚のツボに細い鍼を刺すことで、局所だけでなく、全身の不調を改善することが期待できる。
北里大北里研究所病院・漢方鍼灸治療センターの伊藤剛客員教授は、「長年ツボは実在するか疑問視されていたが、近年の神経科学研究などにより、その正体が明らかになってきた」と話す。
東洋医学でツボは「経穴(けいけつ)」と呼ばれ、全身に張り巡らされた「経絡(けいらく)」上にあり、経絡はそれぞれ特定の臓器とつながっている。古代中国より伝わる経絡は、「気」の通り道とされるが、現在では血管や神経の機能を含む概念と考えられている。
WHO(世界保健機関)もツボの存在を認め、基本的な361種類を規定している。伊藤さんによると、ツボは「体の異常を示す窓であり治療点」。押すと痛みを感じる異常なツボを、鍼や灸、指圧で治療する。
ツボ刺激で起こる反応は、おもに3種類あるという。
一つめが局所作用で、手足な…