特別展「はにわ」に展示された東京国立博物館所蔵の「神将」の埴輪=福岡県太宰府市の九州国立博物館

 いにしえの古墳に立ち並ぶ埴輪(はにわ)は、縄文時代の土偶と並んでなじみ深いアイテムに違いない。円筒埴輪や武具などをかたどった器財埴輪など多種多様だけれど、やっぱり人気は愛嬌(あいきょう)のある動物たちやバリエーション豊かな人物埴輪だろう。

 昨秋から今春にかけて東京と九州の両国立博物館で開かれた特別展「はにわ」(朝日新聞社など主催)に、いっぷう変わった人物像があった。東博所蔵の、武者姿の埴輪である。

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 彼らの身を包むのは、古墳時代の甲冑(かっちゅう)である短甲(たんこう)や挂(けい)甲ではなく、のちの平安時代の豪奢(ごうしゃ)な鎧兜(よろいかぶと)。端午の節句の五月人形でよく見る、あれだ。矛や弓を手にした、りりしいいでたちに「これって埴輪なの?」と一瞬戸惑うけれど、素朴な顔つきはなるほど、確かに埴輪風ではある。

 実はこれ、明治天皇の崩御にともなって埋葬地の京都・伏見桃山陵に奉献された「御陵鎮護の神将」と同じ型でつくられたものだ。当時の内閣の大喪使(たいそうし)からの依頼で、東京帝室博物館が古社寺に伝わる武具や絵巻をもとに監修・制作。遺体を収める部屋の四隅に4体が置かれたという。

 いうなれば、古墳時代から千数百年の時を経て近代に突如よみがえった〝復刻版〟の埴輪なのだ。

埴輪の起源は

 そもそも埴輪の役割って、なんだろう。「日本書紀」に、こんな起源説話が載っている。

 ときは垂仁天皇の治世、高貴…

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