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乾燥中の三方に囲まれ、トングとマルチボックスを手にする吉谷侑輝さん=奈良県下市町新住
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カンサイのカイシャ ここがオモロイ!

 えっ、「三方(さんぽう)」をご存じない? ほら、お正月の鏡餅やお月見の団子をのせる白木の台、アレですよ。今はおうちにない方も増えたのかもしれませんねえ。でも奈良県下市町には、三方作りの技を使っておしゃれな日用品の開発に乗り出した木工所があるんです。

逆風吹きすさぶ三方業界

 吉野の玄関口、下市。特産の三方のルーツは南北朝時代、後醍醐天皇への献上品を載せたことにさかのぼるとされる。吉谷木工所では香り良し、つや良し、粘り気良しの吉野のヒノキの板を帯状に薄くカット。それを曲げて三方を作っている。角となる部分には木材に細かな切れ目(スリット)を入れ、水に浸してやわらかくしてから曲げる。「挽(ひき)曲げ」と呼ばれる伝統の技だ。

 でも、いつごろからだろう。三方を見かける機会が減ったのは。正月の鏡餅は、家でつく代わりにスーパーで買うパック餅が主流になり、ご丁寧に紙製の三方までつくようになった。薄型テレビが一般化してそもそもテレビの上に鏡餅を飾ることもなくなった。

 逆風吹きすさぶ中、副代表の吉谷侑輝さん(34)は新機軸として、伝統の技を使った新商品を出せないかと考えた。折しも世間はコロナ禍の真っ最中。感染対策で直接手で食品やモノに触れないことが求められていた。

 「それや!」…

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