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平和祈念式典に肩を並べて参加し、黙禱(もくとう)するイスラエル、パレスチナ、日本の若者たち=2024年8月9日午前11時2分、長崎市

 8月9日、長崎市の平和祈念式典に、イスラエルとパレスチナと日本の若者たちが、肩を並べる姿があった。市がイスラエルを招待しなかったことを受け、米英などの大使が欠席。異例の状況となる中、若者はともに平和を願った。

 式典に参加していたのは、認定NPO法人「聖地のこどもを支える会」(井上弘子理事長)の「平和の架け橋」プロジェクトで長崎にやってきた、イスラエル・パレスチナ・日本の若者たち9人だ。

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平和祈念式典に参加するイスラエル、パレスチナ、日本の若者たち=2024年8月9日午前10時52分、長崎市
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平和祈念式典に出席した参加者たち=2024年8月9日午前11時2分、長崎市

 プロジェクトは、2005年に始まった。対立が続き、生まれてから平和を知らないイスラエル・パレスチナの若者。世界唯一の戦争被爆国で、戦争を知らない日本の若者。三者が「友だち」になり、対話を重ねて互いの痛みや苦しみを理解し合い、ほんの小さな力でも、平和のために働きかけることができれば――。そんな思いで始まった。

 若者たちが2週間ほど寝食をともにし、広島や長崎、長野を訪れて戦争や宗教について学んだり、ボランティア活動をしたりする。東日本大震災の後は、岩手で海岸清掃や仮設住宅訪問などを続けた。これまで400人以上が参加した。

異例の状況、不安と緊張のなかで

 今年は異例の状況だった。昨年10月、イスラム組織ハマスのイスラエルへの奇襲攻撃をきっかけに、イスラエル軍は報復としてパレスチナ自治区ガザに侵攻し、ガザ当局によると、死者は4万人を超えた。

 終わりが見えない紛争に、悲しみや憎しみがうずまくなかで、今年もプロジェクトができるのか、井上さんは悩んだという。しかし、「こんなときだからこそ」と共感してくれた過去の参加者やそのきょうだいの参加を得て、プロジェクトの実施を決めた。

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認定NPO法人「聖地のこどもを支える会」の「平和の架け橋」プロジェクトに参加した若者と井上弘子理事長(中央)=2024年8月16日午後4時58分、東京都渋谷区

 情勢でフライトにも影響が出た。参加者の何人かは搭乗予定のフライトがキャンセルされ、半日遅れで真夜中に日本に到着した。例年とは大きく異なる状況下で、参加者は本当に友だちになれるのか、不安と緊張のなかで出会った。

 プロジェクトでは、被爆者の話を聞き、長崎原爆資料館を訪れた。資料館で展示されている原爆投下後の街並みや遺体の写真が、自国の現状と重なり、直視できない参加者もいた。

「どちらも紛争の被害者」「戦争はこりごりだ」

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被爆者の話に聴き入るイスラエル、パレスチナ、日本の若者たち=2024年8月10日午前9時31分、長崎市
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紛争や平和について対話する参加者たち=2024年8月10日午前11時39分、長崎市
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紛争や平和について対話の時間を持つ参加者=2024年8月10日午前11時19分、長崎市

 長崎で見聞きしたものを踏ま…

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