ガソリン価格が日本一高い状態が続いた長野県でおきた業界団体「長野県石油商業組合」のカルテル疑惑。組織ぐるみで価格を調整する行為はどんな手口で、なぜ続き、表面化した後はどうなったのか。第三者委員会がまとめた約70ページの報告書には組合員らの証言が収められている。それらをもとに四つの疑問をひもといた。
①どんな手口だったのか?
報告書によると、カルテル行為は県内8支部のうち少なくとも北信、佐久、上伊那の3支部で確認された。
北信支部の証言では、毎週水曜日の午前10時30分ごろ、石油元売り会社から木曜日からの卸売価格の公表がある。この改定幅が「税込み2円以上」となる場合、支部長と、全国展開もしている組合員の事業者の担当者が協議して価格を決定。「○曜日に○円上げ(または下げ)」という内容が、おもに電話で、支部長から副支部長、副支部長から各地区長といった流れの連絡網を通じ各組合員に伝えられていた。
北信支部へのアンケートでは回答者のうち「価格の連絡を受けた」と答えた割合は8割超、「価格の連絡をした」と答えた割合は4割超にのぼった。
北信支部長は組合本部にも電話で同じ内容を連絡。本部では口頭やホワイトボードに書く形で理事長や専務理事にも共有されていた。価格調整に応じない組合員が現れたら、支部の依頼で本部から専務理事や事務局長が協力を求めて訪問することもあったという。
これらの証言から、第三者委は組合本部の幹部もカルテル行為を黙認していたと認定。報告書には「今回はいい機会なので膿(うみ)を全部出し、やってしまったことは認め、組合の信頼回復に努力してもらいたい」という組合員の声が載っている。
しかし高見沢秀茂理事長は「価格を調整しているものとは認識せず」「あまり気にとめていなかった」と主張。平林一修専務理事も「衆院選の協力要請」が訪問の目的でカルテル行為は知らなかったと反論している。
記事の後半では、カルテルはいつどういう背景で始まったのか▽なぜこうした行為が続いたのか▽疑惑が表面化した後はやめたのか、の三点について解説します。
②いつ始まったのか?
カルテル行為がいつ始まった…