気候変動の話をしよう③ プロスキーヤーを目指す手塚慧介さん
今年の夏も災害級の暑さが続いている。このまま温暖化が進めば、地球はどうなるのか?
そんな風に危機感を覚えても、日々の天気への関心ほどに、気候変動アクションに対して関心を向けているだろうか?
気候危機を自分事としてとらえ、一人一人の行動変容に結びつくような「コミュニケーション」とは。長野県白馬高校時代に教室の断熱改修を大人たちに提案し、実現につなげたプロスキー選手を目指す手塚慧介さん(21)に、現状と課題を聞いた。
気候変動への危機感を共有し、多くの人たちのアクションにつなげていく。そのためのコミュニケーションのあり方について、様々な立場の方から、意見を聞くインタビューシリーズです。
ネガティブは避けたくなるから
――災害級の暑さを感じるようになっても、気候変動アクションの広がりは鈍いように感じます。なぜだと思いますか?
「2050年には気温は50度になる」「食料と水、住む場所をめぐって争いが増えて、大量の難民が……」
気候変動の問題は、北極圏でシロクマが死んでいく映像など、つらい、もしくは怖くなる情報を直球で伝えるメッセージが多い。もちろん起きうることが生き物の生存に関わる深刻なことなので、仕方ない面もある。
でも、ネガティブな情報ばかりを受け止め続けられる人は限られます。多くの人は、自然とそれを避けるようになると思う。危機をストレートに伝えて、「もっともっと理解して、行動すべきだ」とメッセージを送っても、「意識が高い人」は一部なので、全体の行動変容につながりにくいのだと思います。
僕自身は高校2年の時に、温室効果ガス排出による気温上昇などの気候危機の問題に関心を持ちました。
スキーや登山、山菜採りなどに友だちや地元の大人たちと親しむ生活を送っていたのですが、白馬の雪がどんどん減っていたのです。「将来は草の上でスキーをするしかないのか」と悲しくなり、地球に何が起こっているのか同級生2人と調べ始めました。
気候危機のストライキを世界に広げたスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(21)のグローバル気候マーチのことも知り、2019年に白馬で呼びかけ120人が参加して実行したり、同級生2人と地元企業などから60万円の寄付を集めて教室の断熱改修をしたり、白馬村長に「気候非常事態宣言」を出すように署名活動をして実現したりしました。
その時も大切にしていたことは、「前向きに取り組める」「足元を大切にする」ことでした。
格差開き、「命」「正義」は届きにくい
「気候変動があり、それをどうにかするためにCO2を減らしてください」と言われても、市井の人は戸惑うし、「意識が足りていない」「知識もないのか」と悪者扱いされているのでは、と受け取る人も多いと思うのです。すると冷めてしまいますよね。
だから、具体的なアクションを起こした断熱改修でも、まずは「自分たちが暖かく快適に過ごせるようになるよ」という点を大切に伝えました。「ストーブで使う石油の量がこんなに減った」というある意味「意識が高い結果」は、2番手扱いで淡々と伝えました。
「命のために」「正義」とい…