シェルター「ながれる」のイメージ=安部良アトリエ提供

 家庭内暴力(DV)や虐待を受けた人たちが一時的に避難するシェルター。その新たな形を模索する動きが東京の下町で始まっている。閉ざすのではなく、あえて地域に開かれた場に――。設営団体がコンセプトに込めた思いとは。

 深川不動堂の参道沿い。東京メトロ門前仲町駅(東京都江東区)から徒歩1分の飲食店が並ぶ一角で、4階建てビルの改装工事が続く。「勇気を出して逃れてきた人が安心できる場所にしたい」。3月の設立をめざす支援団体「ゆずりは」所長の高橋亜美さん(51)は話す。

 ゆずりはは2011年から児童養護施設や里親家庭を巣立った人、虐待や貧困から逃れた人を支えている。社会福祉法人が運営に関わり、スタッフ8人が住まいや仕事などの相談に応じてきた。

 高橋さんによると、年間延べ約6万件の相談には、虐待や経済的な理由から「帰る場所がない」「逃げたい」と切迫した内容もある。一方、相談者に既存のシェルターを紹介すると、スマートフォンは利用できないなどの厳しいルールから、施設を出てしまうこともあったという。

 既存のシェルターの意義は尊重しつつ、必ずしも居場所を隠す必要性が高くない人も一律に、第三者とのつながりが絶たれることを課題と感じていた高橋さん。「守られるべき度合いにもグラデーションがある。スマホで連絡が取れること、誰かと関わることで安心できる人もいる」

 幼少期の虐待によるトラウマで働けなくなった人や、公的支援につながらず困窮している人、シェルターに入りづらい男性なども利用しやすい場をつくりたいと思った。

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