2匹の愛犬と写真におさまる山根義久さん。開業して間もなく始めた勉強会は後に動物臨床医学会へと発展した=2022年3月、鳥取県倉吉市

惜別 山根義久さん(前日本獣医師会長)

(2025年1月7日死去〈肺水腫〉 81歳)

 毎年秋に大阪国際会議場で開かれる動物臨床医学会。犬猫などの小動物を診る開業獣医師や動物看護師らを中心に約5千人が参加する。

 最終日の朝一番に講演するのが恒例だった。早朝にもかかわらず席はぎっしりと埋まる。大学の名誉教授や大手企業の社長、政治家らの顔も多く見られた。元財務相の城島光力さん(78)は、東大の畜産獣医学科を出た縁で親交があった。「言葉だけじゃない。実践の人。大きな構想を打ち出し、実際にやってのける。すごい人だった」

 1943年、鳥取県内の農家に生まれた。地元・倉吉の高校を卒業して家業を継ぐも、恩師の強い勧めで鳥取大農学部に進学。70年に地元で動物病院を開いた。妻・和子さん(82)が「何ごとにも全力で取り組む」と評する性格で、開業獣医師の枠を超えていく。

 開業して間もなく、まわりの開業獣医師らに声をかけ、勉強会を始めた。最初期から参加した山陽動物医療センター院長の下田哲也さん(71)は振り返る。「当時の獣医学は牛や馬など大動物中心。主に小動物を診る開業獣医師は情報に飢えていた」。その閉塞(へいそく)感に風穴をあけた。集まりは次第に大きくなり、皆で技術を磨き、知識を深めあった。

始めた勉強会、開業獣医師の「閉塞感」に風穴

 自身も循環器の分野を究め…

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