神奈川県

 神奈川県は26日、発生する可能性が高い六つの地震について、被害想定を公表した。災害関連死についても初めて推計し、最も人的被害が大きい1923年の関東大震災と同規模の「大正型関東地震」では災害関連死は9460人に上ると推計した。

 県によると、熊本地震では死者の8割が災害関連死で、能登半島地震でも半数を超えていることから、近年の地震災害の課題だとして、東日本大震災の避難者と災害関連死の割合をもとに推計したという。

 想定した六つの地震のうち、死者数は大正型関東地震の1万9780人が最多で、都心南部直下地震の1850人、南海トラフ巨大地震の790人などが続いた。

 建物の耐震化や津波避難ビル、タワーの整備が進んだことから、地震の揺れや津波による死者数や建物の全半壊の棟数は六つとも10年前の前回想定から減少した。

 今回の被害想定を受けて、県は新たな地震防災戦略を策定した。地震防災戦略では、2025年度から10年間で「大正型関東地震」の死者を関連死も含めて半減させることを当面の目標と掲げ、防災におけるDXの推進など10の重点プロジェクトを掲げた。

 災害関連死を防ぐ取り組みとしては、災害用トイレや温かい食事、段ボールベッドを提供できる仕組みをつくり、トイレカーを配置するなど、避難所の環境をよくする。また、避難者が自分の避難場所や状況を登録できるシステムを設けて、状況に応じた支援ができるようにしていくという。

 また、減災効果が期待できる取り組みとして、1981年以前の旧耐震基準の木造住宅を7割減らすと、大正型関東地震で木造住宅の死者数を1万1510人から5060人に減らせるほか、地震発生から5分以内に避難する人の割合を7割に引き上げることで津波による死者数を6070人から4050人まで減らせるといった試算も盛り込んだ。

 黒岩祐治知事は会議後、「衛生環境が悪いと避難所で体調を崩す方も増えてくる。生活環境の向上が災害関連死を減らすことにつながっていく」と話した。

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