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米国向けの貨物船に積み込まれるフォルクスワーゲングループの車=2025年4月30日、ドイツ北西部エムデンのエムデン港、寺西和男撮影

 ドイツのメルツ首相が5日、米ワシントンのホワイトハウスでトランプ大統領と初めて対面での首脳会談に臨む。米欧間で関税や安全保障をめぐって溝が深まり、国内では不安が広がる中、対米関係の立て直しに期待が高まる。「欧州の盟主ドイツ」への復活をめざすメルツ氏にとって大きな試金石になる。

 欧州3位の自動車輸出入量を誇るドイツ北西部エムデン港。1960年代から、隣接するフォルクスワーゲン(VW)の工場でつくられた名車「ビートル」の北米向け輸出港として発展してきた「独米自動車貿易」の玄関口だ。4月末に訪れると、米国に向かう貨物船にポルシェなどVWグループの新車が次々と積み込まれていた。

 電気自動車(EV)の需要低迷を受けて昨年の同港からの輸出台数は前年比8%減った。トランプ米政権が4月に輸入車への25%の追加関税を発動し、町には不安が広がる。「今のところ米国への出荷に変化は見られないが、数カ月先に経済がどうなっているのか分からない不確実性が大きな問題だ」。港湾振興会社のラインハルト・ヘーゲバルト社長(60)は表情を曇らせる。

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トランプ米政権による関税措置の影響について語る、エムデン港の港湾振興会社のラインハルト・ヘーゲバルト社長=2025年4月30日、ドイツ北西部エムデン、寺西和男撮影

 経済の屋台骨である自動車産業は中国のEVメーカーとの競争に押されて業績が低迷。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格や人件費の上昇もあり、VWでは国内で2030年までに3万5千人以上を減らす方針だ。「トランプ関税」が業績悪化に追い打ちをかけるのは必至で、エムデンのVW工場の従業員(36)は「ここに人員削減の波がいつ来るか不安だ」と話した。

 ドイツ経済は昨年まで2年連…

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