3度、異なる旗の下で五輪に出た。母国の英雄として、故郷を離れた難民として、そして第二の祖国を代表して。
テコンドー女子57キロ級のキミアアリザデ・ゼノジ(26)はイラン女性初の五輪メダリストだ。パリまでの8年間は激動だった。
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テコンドーと出会ったのは8歳。近所にたまたま道場があった。
恥ずかしがり屋で、争いごとは嫌い。初練習の日、トイレに最後まで隠れていた。
ジュニア時代、長身を生かした攻撃的なスタイルで頭角を現す。2016年リオデジャネイロ五輪ではヒジャブをかぶったイラン代表だった。当時は無名の18歳。経験豊富な相手を次々と倒し、銅メダルに輝いた。一躍、イランで英雄となった。
当局の命で、メダルを持って国中を回った。どこでも大歓迎された。やがて、メダルの意味が、単なる勲章以上のものだと悟った。「あらゆる女性の、希望となっていたんです」
当局に言わされた「我が国は男女平等」
20年1月、インスタグラムにメッセージを残し、亡命する。
〈抑圧されているイランの皆…