母の奈緒さんが投げるシャトルを打つ高川倭さん=2024年6月3日夜、大阪府泉大津市、西晃奈撮影
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 第106回全国高校野球選手権大阪大会が7月6日に開幕する。一戦必勝、一球入魂、チーム1の守備力……。取材をしていると、球児たちが「イチ」を大事にしているところをよく見聞きする。「イチ」にかける選手たちを追った。

■信太・高川倭選手(3年)

 午後9時過ぎ、マンションの外にある広場で、バドミントンのシャトルを打つ小気味よい音が響く。小さな街灯が2人を照らす。

 信太(しのだ)の高川倭(やまと)選手(3年)がバットを振り、母の奈緒さん(41)はシャトルを投げる。「最近調子悪うて」「あとで素振りの動画撮ろっか」。野球部のこと、学校のこと。たまに冗談を言い合いながら、2人の手は止まらない。

 家は校庭から見えるほど、学校のすぐ近く。だから野球部がアップするときのかけ声も、バットの快音も、よく聞こえる。

 倭さんは信太野球部の活発な声を聞いて育ち、私立高からの誘いもあったが「信太がいい」と、中3の夏に進路を決めた。

 でもその頃、練習試合の守備の途中に目の前が真っ暗になった。気付くと公園の公衆トイレにいる。記憶が全くない。

 授業中にも同じ症状が出た…

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