ウクライナへの対人地雷提供を米国が発表し、議論を呼んでいます。ロシアの進軍を遅らせる目的ですが、中には懸念の声も。何が問題なのか。論点を整理しました。
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Q 対人地雷とは。
A 対人地雷禁止条約(オタワ条約)は「人の接近や接触によって爆発するように設計され、1人以上の身体機能を害したり、殺傷したりするもの」と定義している。例えば人が土の上から踏み、爆発に巻き込まれる事例が知られており、戦後も長期間にわたって民間人を襲う特性がある。
Q 米国は、今回ウクライナに提供する地雷は「戦後に民間人の脅威にならない」と主張しているのでは?
米国側は、電池式で設置から4時間~2週間で効果がなくなるとしている。対人地雷には一定期間で機能を停止する「自己不活性化型」や「自爆型」があり、米国側の説明から、これらに該当するとみられている。
Q 懸念の声とは?
A 一つは、オタワ条約違反ではないかという意見だ。条約は地雷の使用や生産、取得、貯蔵などのあらゆる行為を禁止している。ウクライナは条約の締約国だ。11月にカンボジアで開かれたオタワ条約の運用検討会議では、「受け取った場合、違反となる」と指摘する声明が出された。また、国際ネットワークの地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)は「後世に重大なリスクをもたらす」と非難した。
Q 一定期間で作動しなくなるなら、リスクはないのではないか。
A リスクが下がる可能性はある。しかし、ICBLは「常に意図した通りに機能するわけではない。爆発の危険は残り、除去は必要となる」と指摘。同会議の声明も同様の見解を示し、「民間人に加え、除去に従事する人の命も危険にさらされる」と警鐘を鳴らした。
Q ウクライナの反応は?
A 同会議で国防省の担当者が演説。米国からの提供には触れなかったが、自国が置かれている苦境に理解を求め、「停戦と領土の回復・保全の後、義務に従って地雷を破棄することを保証する」と述べた。侵攻を続けるロシアから国民や領土を守る防衛と、条約の義務のはざまで、厳しい選択を迫られている。