X線CTのデータを元に作られた阿修羅像やその原型の模型が並ぶ特別陳列=2025年7月13日、奈良市山陵町、今井邦彦撮影

 数ある奈良の仏像の中でも抜群の人気を誇る興福寺の阿修羅像(国宝、奈良時代)。その内部に科学の目で迫り、像に込められた「祈り」について考える公開講演会「阿修羅のひみつ―天平の至宝を未来につなぐ―」(朝日新聞社寺社文化財みらいセンター後援)が13日、奈良市山陵町の奈良大学で開かれた。

 阿修羅像と奈良大を結んだのは、今津節生・同大学学長の文化財科学研究だ。2009年、東京国立博物館と九州国立博物館で開かれた「国宝 阿修羅展」に、九博の博物館科学課長として関わった。阿修羅像をはじめとする興福寺の国宝乾漆像(かんしつぞう)群を、X線CT(コンピューター断層撮影)で「健康診断」。奈良大に移ってからもデータの分析を続け、学会や出版物で成果を発表してきた。

 講演会ではまず、興福寺の森谷英俊貫首が「阿修羅の来歴」と題して語った。インド・ヨーロッパ語族の人々が最高神として崇拝していたアスラ(アフラ)が、インドで聖典「ヴェーダ」の神となり、さらに仏教の守護神となるまでの歴史を追った。

三つの表情に込められた意図に迫る

 渡辺晃宏・奈良大教授(日本…

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