福岡県警科学捜査研究所(科捜研)の現役職員、毛利公幸さん(49)が創薬科学分野で九州大の博士号を取得した。除草剤に含まれる毒の成分をいち早く鑑定するために電子レンジを使う手法を見つけたことなどが評価された。
除草剤は殺人に使われることもあり、捜査で血液や胃の内容物から毒の成分を抽出、分析するケースがある。ただ、手間と時間のかかる作業で、毛利さんは2008年から簡素化の研究を開始。仕事を続けながら自費で九州大学大学院に通った。
研究成果の一つが、鑑定資料から除草剤に使われる毒の成分を抽出する際、二酸化チタンを使う手法の開発だ。従来は、含まれている可能性がある毒の成分ごとに異なる手法で抽出作業をしていたが、二酸化チタンは水素イオン濃度を変えることで吸着させる成分を変えることができるため、複数の成分に対し共通の手法が使えるようになった。
抽出した成分の分析時間も短縮した。一部の成分は分析前に科捜研の専門的な加熱器で30分ほど加熱しなければならなかったが、代わりに家庭用の電子レンジを使う手法を発案。かかる時間も約5分になった。これらの成果が認められ今年3月、現職職員としては10人目となる博士号を同大から与えられた。
「従来の手法もその当時認められたものだが、バージョンアップしないと永遠に繰り返されるだけ。誰かがやらなければいけなかった」と毛利さん。今後はこの手法を他の薬品にも応用したり、全国の警察で活用したりすることを目指したいという。「警察の科学捜査レベルを底上げし、事件や事故の解決につなげたい」