記者コラム 「多事奏論」 編集委員・原真人
「14億人の消費市場」と「世界の工場」。どちらも手にした巨竜、中国は近い将来、米国を抜いてGDP世界一になる。国際経済の専門家たちはその可否をめぐって論争してきた。だが最近、どうも巨竜の様子がおかしい。旺盛だった大衆の消費意欲がなえ、物価はややデフレの兆候を見せている。どうしたことか。
巨大な中国経済は三つのステップを経て誕生した。トウ小平による改革開放、世界貿易機関(WTO)への加盟、そしてリーマン・ショック時の4兆元(当時の換算で約57兆円)投資だ。
2008年11月、中国政府が「4兆元」を発表すると金融危機で総崩れとなっていた先進諸国はこぞって歓迎した。
発表直後、私はたまたま高速鉄道の取材で北京の中国鉄道省(当時)を訪れた。日本でいえば国土交通省・鉄道局とJR全社が一体になったような巨大な現業官庁である。
面会した幹部はこれから乗り出す巨額投資を自信満々に語っていた。「日本は新幹線で高度成長を果たした。中国も高速鉄道による『高鉄経済』で発展する」
そこで「四縦四横」と呼ばれ…