インラインスピードスケートの競技場を含む、「かわにしアーバンスポーツパーク」(仮称)の完成予想図=奈良県川西町提供

 奈良県川西町に国際規格を満たす、国内初のインラインスピードスケート競技場が4月に完成する。遊水地として整備され、平時はスポーツ施設として活用を図りつつ、洪水時は大和川からあふれた水を貯留する想定だ。

 国土交通省大和川河川事務所は現在、町北西部の大和川、曽我川、飛鳥川と隣接する約7ヘクタールの土地を「保田(ほた)遊水地」として整備する工事を進めている。

 大雨・洪水時は大和川の水が流れ込んで浸水被害を軽減する仕組みだが、平時は水がない。「広大な空き地となっては地域の人に申し訳ない」(小沢晃広町長)として、国から占用許可を得て活用方法を検討してきた。

 ビオトープを造る案もあったが、インラインスケートの競技団体から国際規格を満たすトラックが国内になく、選手はタイムを計測するにも海外への渡航を余儀なくされていることなどを伝えられ、1周200メートルの楕円(だえん)形のトラックの設置を決めた。トラック部分に大和川の水が入り込むのは10年に1回程度を想定しているという。

 4月にはさっそく日本選手権を開催する予定。競技者だけでなく、初心者向けにスケート教室の開催も検討していく。小沢町長は「町内外の人でにぎわう施設にしていきたい」と語る。

あと一歩で五輪種目に マイナースポーツの悲哀知る選手「競技続けてよかった」

 インラインスピードスケートは縦一列に複数の車輪がついたスケート靴を履き、陸上でタイムを競うスポーツだ。東京五輪で追加競技を検討した際、あと一歩のところで選考から外れた経緯がある。

 ローラースポーツの競技団体はインラインスケートを追加競技に申請したものの、最終的に選ばれたのはスケートボードだった。五輪では日本人選手が活躍し、各地にスケボー場が整備された。インラインスピードスケート選手の川口哲平さん(伊丹スピードクラブ)は「あそこが分かれ道だった」と残念がる。

 川口さんは昨年4月の「全日本トラックレーススピード選手権大会」で、1000メートル、1万メートルで2冠獲得の実力者。コロンビアや台湾に渡って技術を磨いてきた。

 競技について「数十人でトラックを回り、結構ラフな場面もあって迫力がある」と魅力を語る。だが、コロナ禍で何人もの選手が競技を続けられずに去っていくなど、マイナースポーツならではの悲哀を感じてきた。

 国内にトラックは複数あるが、カーブの傾斜部分「バンク」が国際規格を満たしていなかった。「競技場ができた国はめきめき強くなる」といい、川西町でのトラック新設について「競技を続けてきて本当によかった」と喜ぶ。

 川口さんは今月、建設中の現地を視察した。専門の職人が手作業で傾斜部分を細かく調整する姿に感動した。「世界に誇れるトラックになるはず」と期待を寄せる。

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