NPO法人「ハッピーエンジェル」が4月1日に八戸市内のホテルで開いた「入社式」。法人設立10年で、初めての開催となった=2024年4月1日午後2時27分、青森県八戸市、鵜沼照都撮影

 青森県八戸市のNPO法人「ハッピーエンジェル」はこの春、運営する施設を利用する障がい者の手取りを3年前と比べて平均で4倍以上に増やした。法人設立11年目で初めての「入社式」も実現。きっかけは「時給100円未満」でも当たり前とされた福祉業界の常識への疑問だった。

 法人が同市で運営する就労継続支援施設「りんごっこ」。ここを利用し、就労の機会を得る障がい者の工賃(給料)は、今春から時給150~850円になった。元水産加工会社長、鎌田尚さん(56)が2021年7月に副理事長に就任する前は70~150円だった。

 「りんごっこ」はB型就労継続支援施設で、障がい者と雇用契約は結ばない。

 メンタル面で問題を抱える障がい者の多くは、「きょう、元気だったからといって、明日もそうとは限らない。明日になったら布団から起き上がれない、なんて事もままある」と鎌田さん。

 B型の利用者はマイペースで働ける半面、最低賃金の保障はない。このためB型では「時給100円未満」のケースもしばしば生じる。りんごっこが払ってきた工賃も、ずっとそんな調子だった。

 鎌田さんが「りんごっこ」に関与する以前の作業内容は、メール便の配達や緩衝材の折り込み、ニンニクの皮むきなど。法人理事長の竹居純子さん(46)は「(工賃は)そんなものだと思っていた」と話す。

 鎌田さんは水産加工会社を経…

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