障害がある俳優の活動を支えるための手引をつくった筑波大出身で脚本家・演出家の藤井清美さん(右)と同大の大村美保助教=2025年4月9日午前10時40分、東京都文京区、島崎周撮影

 障害のある人たちが、その人らしく生きることができる社会へ――。そのために必要なしくみや考え方を研究し、発信している研究室が筑波大にある。3月には研究室の一部のメンバーらが、障害がある役を実際に障害がある俳優が演じる「当事者キャスティング」で、俳優とスタッフ側双方が気をつけるべき点をまとめた手引を完成させ、反響を呼んでいる。

 筑波大人間系の大村美保助教(51)の研究室で大切にしているのは、障害者が抱える障壁や困難を知るため、なるべく現場に赴くこと、そして問題の背景や解決への道筋をなるべくわかりやすく伝えるということだ。社会福祉法人や自治体などを訪れ、これまでに障害福祉の現場の魅力を伝える動画の制作や、障害者にとってやさしいまちづくりをするための交通マップの作成などをしてきたという。そんな中で今回取り組んだのが、当事者キャスティングについての手引の作成だった。

 きっかけは、同大出身で脚本家・演出家の藤井清美さん(53)から昨年、連絡を受けたこと。藤井さんはここ数年、障害者に演技指導をする機会が増え、障害と業界特有の特性が合っていないように感じたという。現場では作品ごとにスタッフが変わったり、集合場所や時間も毎回異なったりすることが多く、障害者にとっては慣れるのが難しい。オーディションや撮影の前に、俳優側とスタッフ側がそれぞれの事情を共有できるしくみが必要だと考え、手引の作成を提案した。

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