65歳になって障害者総合支援法に基づく自立支援給付が打ち切られ、介護保険の利用で自己負担が生じたとして、身体障害のある千葉市の天海(あまがい)正克さん(76)が、市の決定の取り消しなどを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(岡正晶裁判長)は17日、市の決定を違法とした二審・東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。市の対応が違法だったかは判断しなかった。
- 障害者に立ちはだかる「65歳の壁」 73歳が勝ち取った逆転判決
障害福祉サービスを受けていた障害者は、介護保険の対象となる65歳を迎えると、原則的に自立支援給付を受けられなくなる。「障害福祉サービスより介護保険でのサービスを優先する」との原則があるためで、「65歳の壁」と呼ばれる。
天海さんは両手足が不自由で、支援法に基づき自己負担なく月70時間の障害福祉サービスを受けていたが、65歳となった2014年に支給を打ち切られた。その後に介護保険でサービスを受け始めたが、月1万5千円の自己負担が生じた。
天海さん側は、市が障害福祉サービスの支給を打ち切ったのは違法だと主張。一審・千葉地裁は天海さんの訴えを退けたが、高裁判決は、支給の打ち切りで天海さんが自己負担を強いられたことを踏まえて、市の決定は違法だったとした。
だが第一小法廷は、介護保険優先の原則に基づいて介護サービスに移行した場合、自己負担が生じることは「法令上、当然に予定されている」と指摘。違法性の有無を判断するには、「市の判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くか」をさらに検討する必要があるとして、審理を差し戻した。
障害者が直面する「65歳の壁」
障害者を支える「障害福祉サ…