鳥取県倉吉市の福祉型障害児入所施設「県立皆成(かいせい)学園」で2018年12月、入所者(当時18)が入浴中に溺れて死亡した事故で、県は19日、県や学園の対応状況などを検証していた県児童福祉審議会支援検証部会の検証報告書を公表した。県と学園は事故発生当初、過失を否定していたが、報告書による指摘を受け一転して過失を認め、謝罪した。
亡くなった入所者には知的障害のほか、てんかんの持病があった。学園のマニュアルでは、てんかんのある入所者が浴槽につかっている時は「目を離さないようにする」と定めているが、事故時は1人で入浴させ、職員3人は脱衣室を挟んだ事務室にいたという。
県によると、この入所者は直近約2カ月にてんかんの発作がなかったことや本人の自立度を高める支援方針だったことなどから、事故の1カ月余り前から単独入浴をさせていた。誰がいつ、単独入浴を認める判断をしたのかは確認できなかったという。
報告書は「安全に対する認識の甘さと曖昧(あいまい)な手続きこそが死亡事案を誘発した第一の原因」と指摘。見守りがないために異変に即座に対応できず、発見が遅れて死亡に至ったとした。
県は発生から5年近く経った23年11月に事故を公表したが、その間、保護者への詳しい説明や再発防止策の検討などをせず放置していた。
県によると、死因がてんかん発作による溺死(できし)だったことを理由に無過失と判断したうえ、学園の対応に不信感を抱いた保護者が事故の公表や学園と連絡を取り合うことを望まなくなったとして、県、学園とも終結した事案と判断していたという。保護者が23年8月、当時の状況説明を求めたことから公表と今回の検証作業に至った。
県子ども家庭部の柴田智幸参事はこの日開いた会見で謝罪し、「県、学園とも当時、もっとできることがあったのではないかと反省点が尽きない」と語った。県は今後、和解に向けて保護者と協議するという。報告書の内容は26日の県児童福祉審議会で報告される。