野村不動産ソリューションズが設けた「人財サポートセンター」=東京都新宿区

 緑を基調としたオフィスに、1席ずつ間仕切りされた机が並ぶ。野村不動産ソリューションズが今年1月に開設した「人財(じんざい)サポートセンター」。障害者枠で採用された20人が、データ入力や不動産情報サイトのページ作成など各部門から委託された業務をこなす。

 オフィスには同社の担当者のほか、障害者雇用支援企業「スタートライン」の社員も常駐する。野村の岡田佳邦ウェルネス推進課長は「スタートラインから障害特性への知識、必要な配慮などの助言をもらえる。会社としても働く側としても安心感がある」と話す。

 野村はこれまで、ハローワークなどを通じて障害者採用に取り組んでいたが、採用数が思うように増えず、業務内容も事務作業などに限られていた。そこで、2021年からスタートラインのサテライトオフィスサービスを利用し始めた。

 このオフィスサービスは、利用する企業ごとに部屋が分かれ、各社に雇用された障害者が働く。スタートラインのスタッフが常駐して健康面などをサポートするが、障害者への業務指示や管理は利用する企業が行う。

 野村ではスタートラインの助言で障害者が担う業務の幅が広がったという。今では10部署以上から業務を請け負い、委託待ちの部署もあるほど。さらなる採用増を見込み、新たに作ったのが人財サポートセンターだった。岡田さんは「今後は本人のスキルや意欲に合わせ、本社の各部門に配属できるようキャリアパスの土台も整備したい」と意気込む。

業界団体「疑念抱かれる事業者がいるのは課題」

 企業の障害者雇用の拡大や環境整備を後押しする「障害者雇用支援ビジネス」。企業に障害者を一定割合雇用するよう義務づける「法定雇用率」が段階的に引き上げられる中、支援ビジネスの利用は伸びている。

 厚生労働省の調査で、昨年11月末時点の支援企業は39社と、23年3月末と比べて1.7倍に。利用企業はのべ1583社超で、1081社超から増えた。

 一方で、ここ数年、そのビジネスをめぐって議論が続いている。

 支援ビジネスのサービスの多くは、障害者が農園やサテライトオフィスなど利用企業から離れた場所で働く。作った野菜は寄付するだけといった例もあり、福祉関係者らから「企業の経済活動からほど遠い業務」「雇用率達成だけを目的に利用しているのでは」といった批判があがり、「(障害者雇用)代行ビジネス」と注目された。

 そうした中、23年に支援企…

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