大地の芸術祭で展示されているニキータ・カダンさんの作品「大地の影」=アートフロントギャラリー提供

 ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナから、一人の美術家が来日している。キーウを拠点に活動する、ニキータ・カダンさん(41)。日本で初めて展示された作品には、日常のそばにある戦争の影が色濃く反映されている。

 木炭で描かれた、地平線の先まで続く広大な畑。その手前には、倒れた人のような影が描かれている。大地の力強さの一方、誰とも特定できない黒々とした影は不穏さを感じさせる。

 新潟県十日町市と津南町で今月13日に始まった「大地の芸術祭」。地域を舞台にした芸術祭の先駆けとして知られる。760平方キロメートルの広大なエリアに、国内外275作家の311作品が点在する。カダンさんは、今回初めて参加し、三つの作品を出展した。

 その一つが、「大地の影」と題した連作のドローイングだ。十日町市中心部にある越後妻有里山現代美術館MonET(モネ)に展示されている。

隠されるはずの遺体がそのままに

 この絵を描き始めたのは、ロシアによる全面侵攻が始まった2022年。カダンさんはシェルターとなったギャラリーにいた。

 当時インターネットには、生々しい遺体の写真がたくさん出回っていた。普通は隠されるはずの遺体が、土の上でそのままになっている。

 「生きることと死ぬことの境…

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