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 離婚や家庭内暴力(DV)問題を扱う弁護士が、講演を妨害されたり、SNSで誹謗(ひぼう)中傷されたりするケースが相次いでいる。日本弁護士連合会は、業務妨害や名誉毀損(きそん)といった罪に当たりうる、と警告する。SNSであおるような言説とともに女性弁護士の被害がより目立つという。

  • SNSの中傷激化、講演に影響も 困惑の弁護士「議論の現場が萎縮」

 「決して許さず、毅然(きぜん)と対応していく」。弁護士への誹謗(ひぼう)中傷を巡り、昨年12月、日弁連は渕上玲子会長名で声明を公表した。

 声明によると、離婚など男女関係の事案を扱う弁護士や2026年に施行を控える「共同親権」について情報発信をする弁護士に対し、街宣活動で罵声を浴びせたりSNS上で誹謗中傷したりする行為が数多く報告されている、という。業務妨害罪や名誉毀損(きそん)罪、脅迫罪などに当たりうるとした。

 日弁連の弁護士業務妨害対策委員会によると、2020年ごろから離婚問題の当事者団体が共同親権をめぐって声をあげるようになり、SNSの広がりと相まって誹謗中傷が相次いだという。

 こうした事態に危機感を持った委員会は2023年、アンケート結果をまとめた。集まった229件の回答は公表していないが「女性弁護士の割合がかなり高い」(委員会)という。発生から3年未満の事案が約半数を占め、以前より増えていることがうかがえたという。

市民の権利、守られなくなる恐れも

 DVなどを含む離婚・男女関係のトラブルは、当事者間の感情的な対立が特に激しく、感情の矛先が弁護士に向けられ、業務妨害が発生しやすい事案の典型という。被害を受けた弁護士には、ほかの日常業務に支障を来した人やストレスで体調を崩した人もいるという。

 同委員会副委員長の阿部克臣弁護士は「国民の不利益につながりかねない許されない行為」と話す。

 こうしたことが続けば、攻撃が予想される事案を弁護士が敬遠して結果的に市民の権利が守られなくなることにつながりかねない、などと日弁連は危惧する。

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