女性外科医は男性外科医よりも手術の機会が少なく、手術の難易度が高いほどその差も広がる。日本消化器外科学会が2021年からジェンダー格差の是正に取り組み始めて以降、手術件数の差が縮まったことがデータで示された。一方で、高難易度の手術では依然として男女差が残り、研究者は「男女ともに活躍できる環境づくりが必要だ」と話している。
学会の取り組み前後の変化をまとめた論文(https://doi.org/10.1002/ags3.70080)が発表された。
男性と女性の消化器外科医では、手術の機会が均等ではないことが過去の研究で明らかになっている(https://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/fullarticle/2794668
名古屋大の田中千恵准教授らは、日本の外科手術の95%以上が登録されているデータベースをもとに、15、19、23年の執刀した外科医の男女別手術数を比較した。
その結果、23年は、「胆囊(たんのう)摘出術」など低難易度の手術について男女の格差はほぼなくなった。「幽門側胃切除術」など中難易度の手術については、女性による執刀数が増える傾向にあったものの、依然として格差は残っていた。「膵(すい)頭十二指腸切除術」など高難易度の手術については、男性が圧倒的に多く執刀していた。
日本消化器外科学会に所属する医師は、長時間労働などを理由に若手から敬遠され、減る傾向にある。40年には、がん手術を担う消化器外科医が約5千人不足するとの推計も8月に公表された。
一方で、男性医師の会員は減少しているのに、女性医師は増えている。全体では女性が占める割合は1割未満だが、30歳未満では2割以上を占めている。
同学会では、18年に男性医師と女性医師の手術経験などに関する研究を採択した。この研究によって執刀機会に男女差があることが明らかになり、23年には男女の均等な活躍を支援し、定期的に男女の手術執刀数を検証することを「函館宣言」として発表した。
高難易度の手術の格差が依然…