打席に臨む大西康介さん=2025年6月28日午前11時3分、鳥取県米子市車尾のどらやきドラマチックパーク米子市民球場、奥平真也撮影

 小柄な体にはやや長めのバットをしっかりと構える。山なりのボールに丁寧なスイングで空振りすると、観衆から温かい拍手が送られた――。鳥取県米子市で28日にあった少年野球の始球式で、重い病気と闘ってきた小学6年生が打席に立った。

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 市立箕蚊屋(みのかや)小学校6年生の大西康介さん(12)。双子の弟・勇輝さんと一緒に2013年5月に生まれ、すぐに病気が判明した。

 母親の紘子さん(46)によると、お産の直後に康介さんだけ調子が悪く、体が真っ青だった。市内の鳥取大医学部付属病院で診てもらい、ファロー四徴症(しちょうしょう)という心臓の難病と分かった。

 気管軟化症という気管の病気も疑われ、1カ月半後には小児心臓病の専門科がある岡山大学病院にヘリコプターで運ばれた。

 以来、19回の手術を受け、米子市と岡山市を往復しながら闘病を続けてきた。保育園から小学3年生までは看護師の介助つきで通園・通学した。

 4年生になり介助なしでも通学できるようになった頃、勇輝さんが少年野球チーム「箕蚊屋グリーンスターズ」に入った。それなら自分も、と一緒に白球を追い始めた。

 この日は、どらやきドラマチックパーク米子市民球場の改修を記念するセレモニーがあり、その後に少年野球4チームによる交流試合があった。 康介さんは他チームと組んだ連合チーム「南部ブロックチーム」の先頭打者に指名された。伊木隆司市長が投手を務めた始球式では打者を務め、試合が始まっても懸命にバットを振り続けた。勇輝さんも同じチームで元気なプレーを見せた。

 始球式後の取材に、康介さんは「始球式は初めてで、タイミングが難しかったです」「野球は楽しいです。好きな選手は大谷翔平選手」と恥ずかしそうに答えた。

 紘子さんは「野球は体力的に厳しいスポーツですが、チームが理解してくれて、集団行動や礼儀も学べる。病気や障害があっても、地域の中で育つってことはとてもいいこと。これからも色んなことに挑戦させたい」と笑顔で話した。

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 球場の改修は昨年8月から今年5月にあり、事業費は約11億円。手書きの板を使っていたスコアボードはLED化され、操作盤で自動表示されるようになった。照明も水銀灯からLEDとなり、内野スタンドの約1万600席の椅子のうち約7千席が新調された。7月12日開幕の全国高校野球選手権鳥取大会の会場となる。

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