日ASEAN首脳会議で記念写真に納まる石破茂首相(左から6人目)ら=2024年10月10日、ラオス・ビエンチャン、代表撮影

記者解説 政治部・小村田義之

 一本の論文が波紋を広げている。石破茂首相が就任前に米保守系シンクタンクのハドソン研究所へ寄稿したものだ。

 「今のウクライナは明日のアジア。ロシアを中国、ウクライナを台湾に置き換えれば、アジアに北大西洋条約機構(NATO)のような集団的自衛体制が存在しないため戦争が勃発しやすい状態にある。アジア版NATOの創設が不可欠である」

 中国を仮想敵とするような集団防衛組織をつくろうという呼びかけだ。だが、石破氏が首相に就任すると、アジア版NATOという言葉は事実上「封印」された。

 そもそも今の国際情勢では無理筋だった。NATOは旧ソ連に対抗するため冷戦期にできた集団防衛組織だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)は経済的に中国とつながりが深い国も多く、敵にまわしにくい構造がある。

 アジアでも集団防衛の枠組みが試みられたことがある。冷戦期の1954年に反共軍事同盟の東南アジア条約機構(SEATO)が米国を含む8カ国で発足。日本は不参加で、米国の戦略見直しもあって77年に解散した。

 アジアは欧州と違って地理的な一体性が弱く、特定の国への脅威認識でまとまることは難しい。

ポイント

 アジアで北大西洋条約機構(NATO)のような集団防衛組織をつくるのは難しい。日米地位協定やサイバーなど外交・安全保障の重要テーマは超党派で検討すべきだ。核兵器をめぐる国際情勢が厳しいなか、唯一の戦争被爆国としての発信が問われる。

 それだけに、日米安保条約な…

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