朝日俳壇

俳句時評 岸本尚毅

 歌壇俳壇面で月1回掲載している、俳人の岸本尚毅さんによる「俳句時評」。今回は、それぞれ持ち味の異なる80~90年代生まれの俳人たちの句を紹介します。

 ひさかたの雨を抱きたる梅の花 総史

 時鳥(ほととぎす)まぶしき雨を葉は抱へ 同

 鈴木総史(そうし)の近刊『氷湖いま』より。花や葉が雨を抱き、抱える。よくある擬人法だが、光にかかる枕詞(まくらことば)の「ひさかたの」が、梅の雨粒のきらめきを思わせる。二句目は「まぶしき雨」と、ホトトギスという音の要素とを取り合わせた。これらの工夫により、「抱き」と「抱へ」が濡(ぬ)れた花や葉の質感を伝える。

 鈴木は一九九六年生。「俳句…

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