「この一帯に3千個ぐらいかな」。案内してくれた小野長清さん(71)が指さす畑は一面、1メートル以上の積雪に覆われていた。
雪原の下に埋まっているのは「雪中キャベツ」。秋田県由利本荘市東由利の畑で3月2日、キャベツを掘り出す収穫体験会が開かれる。このところの野菜高騰で垂涎(すいぜん)の的とあって、あっという間に定員150人に達した。
東由利グリーン・ツーリズム研究会が主催。事務局の小野さんの手ほどきで試し掘りに挑戦してみた。雪が多く、スコップで払うのもひと苦労。汗をかきながら掘り進めると、雪の下からみずみずしいキャベツが顔を出した。
研究会代表の金子拓雄さん(73)が10アールの畑にキャベツ5千個を作付け。秋に2千個を収穫し、残り3千個を雪の中で越冬させた。
ぎりぎり凍らない状態を保つ天然の冷蔵庫。「寒中野菜」「越冬野菜」などとも呼ばれ、雪国の保存の知恵だ。
寒さに耐えようと糖度を上げ、スイカ並みの12度にもなるという。掘り出したキャベツの葉を1枚はいで食べてみた。かむほどに甘みが増す。シャキシャキの歯応えがたまらない。
移住体験で埼玉から訪れていた親子も参加し、「どんなに寒くても凍らないのが不思議。パリパリしておいしい」と新鮮さに驚いていた。
金子さんは「利雪とまちおこし、子どもたちの食育に役立ちたい」と毎冬、この時期にイベントを続けている。