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落雷事故があった帝塚山中学・高校グラウンド=2025年4月11日午前9時51分、奈良市学園中1丁目、朝日放送テレビヘリから、小杉豊和撮影

 奈良市の学校グラウンドで10日に起きた落雷事故は、指導者が天候を見極めながら、スポーツ活動の変更や中止を判断する難しさを浮き彫りにした。どのような対応が適切なのか。雷の研究者で、大学サッカー部の顧問を務める中部大学の山本和男教授(電力工学)に聞いた。

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 ――屋外での部活動、体育活動中の雷にはどう対応したらよいのでしょうか。

 鉄筋コンクリート造りの建物や車の中に避難するのが最善です。だから、活動が可能かどうかの判断基準が大事になる。雷の発生エリアを予測する気象庁のサイト「雷ナウキャスト」は一つの基準になります。しかし、警戒度がさほど高くはない、画面に黄色で表示される地域で活動を禁止にしてしまうと、結構な時間、外で動くことができなくなってしまいます。

 ――現実的には難しいですね。

 近くで雷の音がしたら決断しやすいんです。中止にして避難すればいい。安全を重視して考えるとなると、「雷ナウキャスト」を見て黄色で表示されている時はやめるというのは一つの方策ではあります。

 日本サッカー協会の落雷事故防止対策は、①落雷の危険・兆候が確認されたら躊躇(ちゅうちょ)なく活動を中止すること②雷注意報や兆候がある場合は専門的なサイトで常時天候情報を確認することとしています。

雷の危険を知らせる赤色灯

 ――中部大学ではどのような対策をしていますか。

 民間の気象会社と契約をしており、グラウンド周辺に雷が落ちる危険性がある時は、グラウンドの赤色灯が光ります。そうすると、すぐにグラウンドから避難します。学生の数が多いので、お金をかけることができますが、一般の公立学校での導入は費用面で難しいでしょう。

 ――天候が急変した時はどう判断すればいいのでしょう。

 異変を感じたら、活動をやめる。だいたい西側から発達した黒雲が近づいてくるので、まめに空を見ていくしかありません。今回事故があった奈良は、私の出身地なので、当時の様子を知人に聞いたところ、周辺で雷が鳴っていたというよりは、いきなりドーンと落ちたと推察されます。かなり難しいケースだった。顧問の先生に全て判断を任せるのはちょっと酷だ。活動中止の基準を学校で決めて運用するしかないのではないでしょうか。

グラウンドでは高いフェンスのそばへ

 ――子どもに伝えられることは。

 登下校中に雷が鳴って避難できない時は、電柱や電線の真下から2メートルぐらい離れたところに沿って歩いて帰ると比較的安全だとは伝えます。高いところにある電線に雷が落ちる。人に直撃する可能性はおそらく低いでしょう。グラウンドでも高いフェンスがあるのであれば、2~3メートル離れたところを歩いて校舎に避難するのもいい方法かと思います。

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