若者を乗せた淡い緑色の電動キックボードが、街中をさーっと走り去る姿を見るたびに思っていた。
移動することにほぼ苦労のない若者をさらに便利にするより、移動の難しい人たちへのサービスをつくってくれないかなあ、と。
その電動キックボードのシェアリングサービスを手がける会社の社長が、最終的に高齢者の移動課題を解決したいと考えているらしい、と聞いた。
本当なのか、どんな展望を抱いているのか。取材を申し込んだ。
「今の姿にはこだわらない」
東京や大阪などでサービスを展開する「Luup」(ループ、東京都千代田区)の岡井大輝社長(30)だ。記者の抱いていたもやもや感をそのまま伝えると、笑顔で「おっしゃる通りです」と言い、続けた。「確かに、現在のサービスの形にだけこだわるつもりはまったくありません」
- 【連載初回】ホイポイカプセル? ベイマックス? 「風船車椅子」が街を走る日は
2017年に大学を卒業後、仲間と「日本の課題解決につながるような事業をしよう」と起業を目指した。真っ先に考えたのは、必要なときにだけ介護スタッフを自宅に派遣するビジネスだった。
自身の祖母が、時々、介護を必要とする状態だった。認定された要介護度はさほど高くはなく、訪問介護に来てもらえる頻度は限られた。
そんなときの介護は、共働きだった母が都合をつけて担ったが、結局、母は仕事を続けることができなくなった。急に必要になったとき、アプリで依頼すれば介護スタッフがすぐに来てくれる。そんな事業ができないかと思った。
■「駅近」にあらゆる機能、痛…