日本原子力研究開発機構は、電源なしで「超高真空」と呼ばれる状態を保てる輸送ケースを開発した。半導体など、空気に触れずに運ぶ必要のある精密な素材を、省エネルギーで運ぶのに役立つとして、実用化を目指すという。「空気をくっつけやすい」という金属チタンの特性を利用した技術だ。
開発したのは茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J―PARCで、加速器での実験に欠かせない真空状態を保つ技術の研究を重ねてきた、神谷(かみや)潤一郎さん率いる「神谷超高真空技術開発ラボ」。
通常、真空を保つには、電気を使ったポンプで空気(分子)を吸引、排出し続ける必要がある。容器内側に付着していた気体が放出され、真空が弱まる課題もある。
そこでラボでは、空気を吸着しやすい材料のチタンに着目。真空への気体放出を防ぐよう、チタンの表面加工に工夫を重ねたところ、特殊なコーティングなどを施すことで、チタンの素材自体に、電源なしでポンプのように空気を吸い付ける役割を持たせる技術にたどり着いた。
研究を続けるうちに、ナノ材…