無投票当選を決め、お祝いにかけつけた郡和子仙台市長と握手する山田司郎氏=2024年6月30日午後5時半、宮城県名取市、石橋英昭撮影
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 宮城県名取市長選が6月30日告示され、無所属現職の山田司郎氏(61)=自民、立憲、公明推薦=のほかに立候補がなく、山田氏が3選を果たした。同市長選が無投票で決まるのは、1992年以来32年ぶりとなった。

 山田氏は当選が決まった後、「名取市のポテンシャルの高さをさらに引き上げ、持続可能なまちにしてゆきたい」と話した。無投票だったことについては「本来は選挙で選ばれるのがあるべき姿だ」とした。山田氏は市議を経て、2016年に4期目をめざした現職候補を破り、初当選した。

東北全体が縮む中で…

 宮城県名取市は「人口が減らない街」だ。

 国立社会保障・人口問題研究所が昨年12月に公表した2050年の推計では、20年比で2・1%減の7万7千人と、東北6県の自治体で最も減り幅が小さい。東北全体が3分の2に縮み、仙台市でさえ8・9%減で100万人を割り込む予想の中、名取の「一人勝ち」は際立つ。

  • 「消滅可能性自治体」マップ

 11年の東日本大震災では沿岸の閖上地区などが壊滅、市民900人以上が犠牲に。皮肉なことに、この震災が人口増のバネになった。

 1990年代以降、仙台空港アクセス鉄道の沿線や丘陵地帯に宅地が造成されたが、景気失速で売れ残っていた。そうした土地が市内の被災者だけでなく、県南部や福島県で住まいを失った人の受け皿になった。復興景気で地価が高騰した隣の仙台市からは、割安な住宅を求めて子育て世帯がどっと流れ込んだ。

 震災翌年からの12年間で、10%超の約8千人増。14歳以下が占める割合は15%台を維持し、「若いまち」であることが将来推計を押し上げている。

 新たな追い風も吹いている…

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