帰還困難区域への出入りを制限するバリケード。奥にはかつての住宅が見える=2025年6月17日、福島県双葉町、大久保泰撮影

 政府は2030年度までの復興予算の規模を1.9兆円とする方針を掲げた。予算の大半が投じられる福島は、原発事故の影響で復興のただなかにある。街づくりがほぼ完了した宮城や岩手では震災の傷を抱える人たちが今もいる一方で、特別な体制をやめる動きもあり、対応が分かれ始めている。

  • 東日本大震災の復興予算1.9兆円を政府決定 26年度からの5年間

東京23区の半分ほどの「帰還困難区域」のこれからは

 福島県内には、原則立ち入りが禁じられている帰還困難区域が残る。面積は東京23区の半分ほどで、境界にはバリケードなどが設置されている。中に入れるのは元々住んでいた住民や防犯パトロールなどの公益目的に限られ、自治体などの許可も必要だ。

 国は区域内を除染して人が住めるようにする取り組みを進め、22年6月以降、役場周辺など区域全体の約8%で避難指示を解除。今はそのほかのエリアでも29年までに帰還希望者が戻れるように自宅などの除染を始めている。

 ただ、除染されずに残る約9割のエリアをどうしていくかの具体的な計画はない。国が基本方針に盛り込んだように、安全確保を前提に自由に活動できるようになれば大きな転換となる。

 第一原発が立地する双葉町では22年8月、除染を行った町中心部などで避難指示が解除され、11年ぶりに人が住めるようになった。80代の女性は直後に避難先から町に戻り、町が整備した町営住宅で暮らす。ただ、町の85%は今も帰還困難区域で、女性の元の自宅も区域内にある。女性は「家の近くまで戻ってきたので、毎日でも(区域内の)墓参りに行けると思っていた」という。だが、入るには事前の手続きが必要で、それほど頻繁には足を運べていない。「手続きがなくなれば助かる」

 国も空間放射線量の全体像は把握しておらず、立ち入りの際の安全の基準をどう設けるか、といった課題は多い。

「危険を排除できる状況でなければ」と双葉町長

 双葉町の伊沢史朗町長は、今…

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