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震災直後、塩川書店の「少年ジャンプ 読めます!」の貼り紙=2011年3月28日、仙台市青葉区、衛藤雅之さん撮影、3.11オモイデアーカイブ蔵

 また1軒、まちの本屋が消える。

 仙台市青葉区にある塩川書店五橋店。先代が別の場所に開いた時から数えて創業62年になる今年8月末、店を畳む。あるじの塩川祐一さん(61)の苦しい決断だった。

 1冊の「週刊少年ジャンプ」が、わずか20坪ほどの小さな本屋を、有名にした。

 2011年3月11日、東日本大震災の揺れが仙台を襲う。塩川書店は棚の本が崩れ落ち、停電に見舞われ、商売どころではなくなった。

 2日後のことだ。塩川さんが買い出しでスーパーの長い列に並んでいたら、何人かの若い母親に言われた。

 「子どもが余震や津波の映像を怖がっている。絵本やマンガを読ませたい」

 大急ぎで片付け、翌日に店を再開。書店のある地域は、電気が早く復旧した。明かりに吸い寄せられるように、まちの人が入ってきて「大丈夫だった?」「大変だね」と心を寄せ合った。

 そのうち、誰かが言いだした。「今週号のジャンプはどうなるんだ?」

止まった配本 「ワンピースの続きは?」

百人以上に回し読みされたジャンプは「保存して飾りたい」と集英社に引き取られ、2012年には手塚治虫文化賞の特別賞も受賞しました。

 店を開けた3月14日の月曜…

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