また1軒、まちの本屋が消える。
仙台市青葉区にある塩川書店五橋店。先代が別の場所に開いた時から数えて創業62年になる今年8月末、店を畳む。あるじの塩川祐一さん(61)の苦しい決断だった。
1冊の「週刊少年ジャンプ」が、わずか20坪ほどの小さな本屋を、有名にした。
2011年3月11日、東日本大震災の揺れが仙台を襲う。塩川書店は棚の本が崩れ落ち、停電に見舞われ、商売どころではなくなった。
2日後のことだ。塩川さんが買い出しでスーパーの長い列に並んでいたら、何人かの若い母親に言われた。
「子どもが余震や津波の映像を怖がっている。絵本やマンガを読ませたい」
大急ぎで片付け、翌日に店を再開。書店のある地域は、電気が早く復旧した。明かりに吸い寄せられるように、まちの人が入ってきて「大丈夫だった?」「大変だね」と心を寄せ合った。
そのうち、誰かが言いだした。「今週号のジャンプはどうなるんだ?」
止まった配本 「ワンピースの続きは?」
百人以上に回し読みされたジャンプは「保存して飾りたい」と集英社に引き取られ、2012年には手塚治虫文化賞の特別賞も受賞しました。
店を開けた3月14日の月曜…