阪神・淡路大震災から30年の節目に合わせ、兵庫県立美術館(神戸市中央区)で「1995⇄2025 30年目のわたしたち」展が開かれている。同館は震災復興の文化的シンボルとして2002年に開館。約1600平方メートルある企画展示室を使って震災に関わる自主企画展をするのは、今回が初めてとなる。

束芋さんの映像インスタレーション作品「神戸の家」(2024年)

記憶の継承「今がバトンタッチの機会」

 「被災の記憶を当事者だけに限ってしまうと、その人がいなくなれば忘れ去られてしまう。その日その場にいなくても、記憶を継承することができる。30年の今がバトンタッチの機会だと考えた」。同館の林洋子館長はこう話す。

 同館ではこれまで、主に震災を直接経験した美術家の作品や、被災した文化財を継承する取り組みなどを紹介してきた。今回は出品作家を選ぶ際に、震災当日にこの地にいたかどうかは問わないことにし、1965~84年生まれの6組7人の作家を選んだ。18人いる同館の学芸員も、震災時に前身の兵庫県立近代美術館の職員だったのは2人だけ。林館長自身も東京都現代美術館準備室にいた。

記者会見に出席する出品作家たち。右から束芋さん、米田知子さん、やなぎみわさん、梅田哲也さん、森山未來さん、田村友一郎さん=神戸市中央区の兵庫県立美術館

 企画展のメイン担当・小林公(ただし)学芸員も当時は横浜市在住の高校3年生だった。「30年経ち、今を生きている私たちにとって考えるべきことは何かを一緒に考えてくれるアーティストを選んだ。おずおずとではあるが、希望に近いものを語り始めることができるのではと考えた」と小林学芸員。

ウィンドウズ95登場からの30年

 展示は、6組で唯一、震災と…

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