霊長類の行動観察とデータ分析について正しい知識を伝え、高校での指導に生かしてもらおうと、東邦大学理学部の井上英治教授(行動生態学)が5日、千葉市動物公園で理科教諭らを対象にサイエンス教室を開いた。
井上教授は、高校の教育現場で探求学習が盛んになっていることを踏まえ、「観察でとったデータをもとに、動物の行動の意味を考えることは高校の授業でもできる。課題設定などの手法を先生たちに広く伝えたい」としている。
講義には、県内外から理科教諭ら11人が参加。井上教授から観察方法などの説明を受け、園内でチンパンジーやテナガザルなどの霊長類を30分単位で計3回観察した。参加者は共通の観察項目として「体をひっかく行動」の頻度をチェックし、それが「手」か「足」によるものかを分類した。
その後、個々の参加者がとったデータを持ち寄り、井上教授が分析方法などを説明した。参加者のデータを統合したうえで、「サルでも人間に近い類人猿では、足ではなく手で体をかいている頻度が多いことがはっきりと分かる」と指摘。「データを結合し、そのデータから仮説をたてるなど、色々と生徒が考えることができるのでは」と話した。
昭和学院秀英高校(千葉市)で非常勤講師を務める真保靖子さんは、授業で直接、大型哺乳類を観察することはなく、教科書や映像で学ぶ程度という。「生物部の活動で動物園の行動観察も検討してみたい」。筑波大付属駒場中・高校(東京都)教諭の宇田川麻由さんは、チンパンジーやニホンザルを観察。「学習内容と直接つなげるのは難しいかもしれないが、テーマを持って動物を観察することは、意外と高校生に向いている」、土浦日大高校(茨城県)から参加した教諭の原田翔太さんは「普段は化学を教えているが、探求学習でいろいろな視点を採り入れられると思って同僚と参加した。学校からもそれほど遠くないので行動観察もやってみたい」と振り返った。