Smiley face
写真・図版
長谷元喜さんが事故に遭った交差点に立つ父の智喜さんと母のかつゑさん=2024年3月15日午後3時2分、東京八王子市上川町、藤田大道撮影

 「元気いっぱいで、たくさんの喜びを与えられる人になるように」

 1981年、東京都八王子市に生まれた長谷元喜さんの名前には、こんな思いが込められた。「喜」の1字は、父・智喜さん(71)からもらった。

 元喜さんは、素直で優しい子に育った。慎重な面があり、人前に出ることは好きじゃなかった。

 でも、小学校5年生の学習発表会では、主役の「百姓」の役に挑戦した。

 母・かつゑさん(71)が驚いて理由を尋ねると、「恥ずかしかったけど、前に出てやる役をやってみたいから」。少し胸を張って答えた。

 「毎日そばで見ている親でさえ知らないところで、子どもは成長していくんだな」。自分の殻を破って大きくなっていく姿に、かつゑさんは、わくわくする気持ちでいっぱいだった。

 だが学習発表会の直後の1992年11月、登校中に青信号で横断歩道を渡っていて、左折してきた大型ダンプに巻き込まれ、元喜さんは亡くなった。11歳だった。

息子の残した手書きの言葉

 ランドセルの中の教材には、元喜さんの手書きの言葉が残されていた。

 「信号はなぜあるのか」…

共有